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田中孝顕サクセスコラム

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田中孝顕が綴る「脳力開発」にまつわるコラム。
成功実現へと導く頭の使い方、「成功哲学」のヒントとアドバイスを紹介します。
第十四回 読書遍歴 
(その4:相性に合っていた法律学)
カフェー丸玉女給事件

photo 法律学は私の相性に合っているようだった。岩波から出ていた我妻栄の『民法講義』シリーズや創元社で出版されていた当時の刑法学の重鎮、団藤重光『刑法綱要総論・各論』など、実際、手当り次第に何度も読んだ。
民法というのは判例が非常に面白く、今でも「カフェー丸玉女給事件」とか「宇奈月温泉木管除去請求事件」などという判例に付けられた事件名を覚えているほどである。
カフェー丸玉女給事件というのは、名前のごとく、かなり昔の事件で、昭和10年に大審院(今で言う最高裁判所)判決が出た。カフェー(大阪の南区道頓堀にあった。今ではパチンコ屋「まるたま」としてあるらしい)というのは、今のキャバクラのようなもので、そこでどこかの金持ちのボンボンが女給、すなわちホステスを口説くために、巨額の金員(当時の金で400円)を独立資金としてその女給に与える、という念書に実印まで押して渡したところ、いつになっても実行してくれないため、女給が裁判所に訴えたという案件である。
金を渡すという実印が押してある証拠書類まであるのだから、当然女給が勝訴すると普通は思う。事実、一審、二審は女給が勝訴した。青くなった金持ちのボンボンは最後の望みを大審院に賭けたところ逆転勝訴となったものである。理由は「カフェーのような場所で、しかもごく短期間しか通っていない客が、女給を口説くために行なった約束は、客がちゃんとその金額を支払えばその約束は有効だが、そうでない場合、その客に対し、債務の履行を裁判所が命ずるほどのことはない」といった趣旨であった。


憲法への関心

憲法は当時、清宮四郎博士と宮沢俊義博士の本が著名だったので、有斐閣から出ている清宮『憲法T』、宮沢『憲法U』を読んだが、印象に残ったのは、当時、中央大学教授であった橋本公亘の平等概念で、同氏は、有斐閣の『日本国憲法』において、「差は差として認めながら、両者間に価値の上下をつけないこと」と定義した。これは実に明晰な定義だと私は思って大いに感心したものだが、最近の憲法学での平等概念はより緻密になっており、法律の内容が平等であることと、各人の事実的差違を前提として、同一の事情と条件の下では均等に取り扱う(言い換えれば同一でない事情と条件下では取り扱いの違いは容認される相対的平等)、という考え方が主流になっているようである。
とはいえ結局、法律の場合、幾ら民法、刑法を熟読しても、民事訴訟法と刑事訴訟法を学ばなければ何の意味もないことを知り、有斐閣から出ていた三日月章の『民事訴訟法』を読んだが、この、通称「民訴」は、私にとっては「眠素」であった。
そのため訴訟法は挫折したが、最近になって、そろそろ頭の体操代わりに読んでみようと思っている。かつて三島由紀夫は団藤重光教授から刑事訴訟法を学び、その精緻な論理性や美しさに魅了された、と述懐しているほどであるから、今から楽しみである。


…「読書遍歴その5:最近の読書」に続く




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